年々難しくなる調査
年々難しくなる家系調査
紹介した二例は、ご依頼主と先祖代々の住まいが近距離だったことで、調査のための地理的な移動は比較的少なくて済みました。しかし、中には日本列島を縦断しながらご先祖を辿らなければならないようなケースや、海外にまで調査の網を広げるといったケースもまったくないとは限りません。そういった困難な調査の場合には必然的に時間もかかってしまうわけです。
話を聞かせてくれた調査員は、雨の日、風の日、関係なく調査に出かけて行きます。時には調査スケジュールの関係で、大雨の日に山奥の古いお寺で墓石調査をしなければならないようなこともあると言います。また、夏場のお寺は蚊やアブ、ヘビなども多いため、場合によっては真っ先に雑草を刈り取り、きれいに掃除をしてからでないと墓石調査にかかれないということもあるそうです。
調査員本人のコメントにもありましたが、調査を進める中、目には見えないけれど、その家系のご先祖が総出で調査を応援してくれているような気持ちになることがあるというのは、彼のみならず他の調査員たちからも聞くことができました。
例えば、こちらが何の説明もしていないのに家系調査というだけでひとりの人が親戚一同を呼び集めてくれたり、ふと立ち止まって振り返ると調査の鍵を握るお宅の門の前だったり、難航していた調査が何かをきっかけに驚くほどのスピードで前に進んだり……。
家系図が完成して納品する際に、ご依頼主の方にそれら調査中のエピソードをご報告することも調査員たちにとっては大きな喜びであり誇りでもあるようです。
日本は、きちんとした調査さえすれば家系を明確に知り、その伝統を後の子孫にも受け継いでいくことができる数少ない国のひとつです。近年、そのことに気付いた人たちが中心となり、再び家系の重要性を見直そうという動きが盛んになり始めています。
しかし、その一方では人間関係、親戚関係、家族関係が希薄になりがちな今の日本、人と人のつながりを手がかりに、情報や資料を訪ねながら家系を調査し系図を作製するということが年々困難な作業になりつつあるという現実も、最後にお伝えしておかなければなりません。